一流クリエーターが手がけた隠れた名作。「名探偵ホームズ」のすべてをあなたに。

■5分でわかる!これであなたも「名探偵ホームズ」通!?

「ホームズって、犬のアニメだよね?」

そのとおりです。 でもそれだけで終わるなんてとんでもない。
宮崎駿、「風の谷のナウシカ」と同時上映、テレコム・アニメーションフィルム、製作中止(!?)・・・
こんなキーワードが次から次へと出てきたら、「犬のアニメ」で終わるなんて思わないでしょ?

5分だけあなたのお時間をください。答えはスグ下にありますから!


▼原作はあの探偵小説

「名探偵ホームズ」は、コナン・ドイルが生み出した世界で最も有名な探偵
「シャーロック・ホームズ」を原作にした冒険活劇アニメーションです。

1984年11月6日〜1985年5月20日の約7ヶ月間、テレビ朝日系列にて全国放送されました。
放送時間は19:00〜19:30。(ゴールデンタイムをばっちり確保!)
お茶の間で晩ご飯を食べながらみた方もいらっしゃるのでは?
 

▼合作という状況、そして「犬」のキャラクター

「名探偵ホームズ」の製作はTV放送の3年以上も前、1981年に
東京ムービー新社とイタリアの国営放送RAIとの合作として製作がスタートしました。

舞台はドイルの原作通り「霧の街・ロンドン」。
しかしホームズやワトソンなど、すべてのキャラクターを犬に置き換えるというユニークな設定が特徴です。
そう!ロンドンは犬の都なのです(笑)

日伊合作での製作にあたり、様々なことを考える必要がありました。
親しみやすいキャラクターであること。
日本の子供にもイタリアの子供にも受け入れられること。

両国のスタッフが意見を出し合い、時には激論をかわしました。
それもそのはず。国が違えば習慣や感覚も違うのです。
議論の末、ついにその難局は突破することができました。
今ではすっかりおなじみのあの愛しいキャラクターたちが産声をあげたのです。
 

▼憎めない悪役・モリアーティ教授

登場人物がすべて犬キャラとして描かれ、親しみやすさを中心にすえたことにより
原作のような「推理モノ」ではなく、「コメディ」としての色合いが強くなりました。
その象徴がホームズの宿敵・モリアーティ教授です。

部下のトッドとスマイリーともども、ホームズのライバルして毎回のように大活躍!
(といっても、彼の犯罪が成功することは一度もなく、毎回ホームズにしてやられるのですが(笑))

正義の味方(?)はその正反対の立場にある悪役があってこそ存在感が出るといわれます。

時には主人公であるホームズでさえその存在が小さくみえるほど、彼の役割は大きいのです。
社会的に決して許されない犯罪であっても、彼の存在はそれを面白くさせてしまうのです。
(いや、それはダメだろう!・・・と自分にツッコミを入れておきます(^^;)

そう。モリアーティ教授こそ、もうひとりの主人公なのです。
 

▼動画10000枚!?緻密な背景画、ひとりひとりが動く群集

「名探偵ホームズ」をご覧になったことのあるあなた。
あなたがこれまでみてきたTVアニメとこの作品に、なにか違いを感じませんか?

たくさんの人が群がる群集シーンで、ひとりひとりがしっかり動いていると思いませんか?
背景がとてもきれいで緻密に描かれていると思いませんか?

この作品の素晴らしさをより一層引き出しているのは、
クリエーターたちの蓄積されてきた技術と想像を絶する努力でしょう。

私はアニメーション製作で大変だなあ・・・と思うことがあります。
それは膨大な量の絵を描くことです。
教科書の端に描いたパラパラ漫画を思い出してください。
ほんの数秒の動きでも、少しずつ違う絵を何ページにも描かなければなりません!
これを30分のアニメにするとしたら?想像しただけで腱鞘炎になりそうです(笑)

一般的な30分のTVアニメでは、通常3500〜6000枚の絵を描くそうです。
ひとりで1日20枚描くとしても、半年から1年かかる計算です。考えただけでウンザリします。(オイオイ)

「名探偵ホームズ」では、なんと!毎回10000枚前後の絵を描いているのです!!

枚数の多さは作品の質を決定する大きな要因のひとつです。
長編アニメ映画と匹敵するくらいのクオリティが「名探偵ホームズ」にはあるのです。
 

▼宮崎駿、近藤喜文、山本二三・・・。一流スタッフ勢ぞろい!

シリーズ26話中、製作初期6作品の監督は宮崎駿が担当しています。
2004年最新作『ハウルの動く城』は、第61回ベネチア国際映画際コンペ部門に出品され、
オゼッラ賞(技術貢献賞)を受賞しました。

今では「宮崎アニメ」という一ジャンルを確立するほどの人気を誇る宮崎駿監督。
彼がTVシリーズアニメのスタッフとして最後に担当したのが、この「名探偵ホームズ」だったのです。

ほかの20作品は御厨恭輔氏が監督を。
作画監督には近藤喜文、山内昇寿郎、丹内司、友永和秀らが。
演出には早川啓二、奥田誠二ら。

宮崎氏と親交の深かったクリエーターが中心となってこの作品は作られました。

「宮崎アニメ」の代表作『風の谷のナウシカ』から、近年大ヒットした『千と千尋の神隠し』へと受け継がれる面白さ。
その土台をしっかり築きつつも、コメディタッチの親しみやすさを持つ「名探偵ホームズ」。

長編大作ばかりに目を取られないでください。
隠れた名作は、ここにあるのですから!

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